新たなる畜産?昆虫食について考える

最近注目が集まる昆虫食について、興味があったので調べてみました!

昆虫食とは、昆虫を食材とした食品や料理のことを指します。

昆虫食は世界中、特にアジア、アフリカ、中南米などでは古くから親しまれてきました。

日本においてもイナゴの佃煮など各地で食べられてきました。

特殊な食べ物というイメージの強い昆虫食ですが、とある理由で注目されています。

なぜ昆虫食に注目が集まっているのか?

発展途上国における人口の増加と食生活の欧米化によって、肉の需要が急上昇しています。

このままだと2030年には肉の供給が追いつかなくなると考えられています(タンパク質危機)。

さらに、地球全体での人口の増加も著しく、2050年には90億人を超えると予測されています。

その結果、タンパク質どころか、食糧そのものが不足するのではないかと懸念されています(食糧危機)。

これらの不足分を畜産で補うためには、農地を現在の約30%増やす必要があるそうです。

ところが、すでに地球上で利用可能な場所はほぼ全て使われており、これ以上増やすためには砂漠を開拓するか森林を切り開くしかないのです。

そのような状況を鑑みた国際連合食糧農業機関(FAO)は2013年に昆虫食を推奨する声明を発表しました。

もしかすると昆虫食が人類の食糧危機を救うのではないか!と注目されています。

昆虫食の歴史

日本に暮らしていると昆虫なんて人間の食べ物じゃない!なんて考えてしまいます。

しかし、FAOは食べるものがなくなったから、無理に昆虫を食べろと言い出したわけではありません。

元々、世界各地では昆虫を食べる文化が存在します。

畜産が発達する前は、昆虫食は簡単に手に入り栄養価も高い貴重な食材でした。

実は、現在でも南極大陸以外の大陸には昆虫食文化が残っており、世界の約19億人が2,000種類もの昆虫を食べているそうです。

特に、アジア、中南米、アフリカでは昆虫食の文化が色濃く残っています。

例えば、中国では漢方薬として使用されてきた歴史があります。

タイやアフリカではスナック感覚で楽しまれています。

メキシコでは、芋虫を蒸留酒に入れたり、昆虫をタコスに入れる料理なども知られています。

もちろん日本も例外ではありません!

お土産などで見かけたことがあるかもしれませんが、長野や岐阜県などでは、イナゴの佃煮やへぼ飯(蜂の子ご飯)が今でも食べられています。

つまり、昆虫食は突然降って湧いたような奇抜なアイデアではなく、昔から人類にとって身近な食文化です。

では、なぜ、食糧危機の救世主となりうるのか、各地に定着している昆虫食が食糧危機の打開策として、注目されている理由を見てみましょう!

昆虫食をする理由は?

昆虫は栄養価が高い

昆虫は小さい体でありながら、強い力を持っています。

昆虫を触ったことがある人であれば、その力強さに驚いたことでしょう。

そのイメージに違わず、昆虫はかなり高タンパク質です。

牛や豚などの食肉ではタンパク質率が20%ほどなのに対して、昆虫のタンパク質率はなんと60%もあるそうです。

また、昆虫には鉄分やミネラルが豊富、オメガ3などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

不溶性食物繊維(キチン質)も多く、栄養価としては非常に良いもののようです。

これだけタンパクが多いなら、筋トレに最適な食材なのでは!?

昆虫食のタンパク含有率がすごいことは分かりましたが、質に関してもみてみましょう!

従来のアミノ酸スコアに必須アミノ酸の消化吸収率を考慮した消化性必須アミノ酸スコア(DIASS)はひとつの指標になると思います。

DIASSを用いると牛は109.3%、豚は113.9%の一方で、イエコオロギは76%です。

質的な観点で見てみると家畜に軍配が上がります。

このように、タンパク質の含量だけでみると昆虫食が優秀ですが、質で見ると食肉の方が良さそうです。

このようにそれぞれの強みが異なるので、それぞれの素材の良いところを活かして住み分けができるのではないかと思います。

効率的に生産できる

昆虫食の第2の売りは、効率的な生産が可能になるという点です。

昆虫は、家畜よりも省エネルギー、短時間、省スペースで出荷が可能になるため、より効率的に食料の供給を可能にすると考えられています。

まず、牛肉と昆虫食をそれぞれ1 kg産生する時に必要となるエネルギーを見てみると、牛肉では飼料8~10kg、水22,000 L(お風呂の110倍の量)ほどです。

飼料の量のなかなかですが、水分要求量が凄まじいです。

加えて、畜産による温室効果ガスの排出量は非常に多く、温室効果ガスの総排出量のうち、14%が農業生産から、そのうち65%が牛肉由来と言われています。

その一方で、昆虫食は飼料1.7 kg~2 kg、水4Lほどで済みます。

さらに、牛や豚は、非可食部があるため廃棄部位がありますが、コオロギはその割合が少ないようです。

出荷までの時間について考えると、肉牛が約30ヶ月、豚は約3ヶ月なのに対して、コオロギは産卵から出荷までは1~1.5か月しかかかりません。

畜産ほどのスペースがなくても生産可能という点も昆虫食の強みのようです。

畜産では、広大なスペースが必要であるのに対して、コオロギは衣装ケース1箱から飼育が可能です。

この点を活かして、宇宙食への応用も考えられています。

長期的に宇宙に滞在することを想定すると食料を自給する必要があります。

省スペース、短時間、省エネルギーで育つ昆虫は、ベストマッチです。

JAXAやNASAでも、昆虫を貴重な宇宙におけるタンパク源として利用する方法を研究しています。

このように、効率的に生産可能なことから、環境への負荷も小さく、持続性の高い食品となることが期待されています。

これにも少し疑問が残ります。

確かに飼料効率で見ていくとコオロギが優秀なことは明らかです。

しかし、コオロギは変温動物なので、外気温の影響を大きく受けてしまいます。

コオロギは25~30℃が最適温度であり、繁殖には湿度管理も重要となってきます。

そうなると、冬が低温乾燥、夏は高温湿潤である日本の環境では、空調管理は必要不可欠です。

国内での生産体制と考えると、本当に効率的で環境に優しいの疑問です。

次に昆虫食の課題を見ていきましょう。

昆虫食の課題とは?

価格が高い 

昆虫食の課題の1つは、価格が高いことです。

この理由としては、現在は昆虫食の需要は少ないため、比較的メジャーなコオロギでさえ、供給量・流通量を増やせないことにあります。

昆虫食が普及すれば、当然大量生産できて、解決するはずです。

現状としては、昆虫食が市場に受け入れられていないので、仕方のないです。

昆虫食を手がける企業がどのようにして普及させていくのか楽しみです。

「食べられる」と「食べたい」は別物

これこそが普及していない理由の1つだと思いますが、文化、習慣的な側面から昆虫食と聞いて、美味しそうには思えないことだと思います。

いくら栄養価が高くても、昆虫と聞くだけで食欲を失う人が多いのではないでしょうか。

昆虫食は、粉末で流通していることが多いので、見た目の気持ち悪さは解決していますが、やはり昆虫を食べることに対するイメージは良いものではありません。

昆虫食はニュースになったりとそこそこ話題になっている印象はありますが、新しいもの好きの人やYouTuberなどが飛びついている段階で止まっている印象です。

怖いもの見たさ、興味本位から常食へと進めていくのはなかなか大変な仕事でしょう。

ベンチャー企業に加えて、大手では無印良品も参加しています。

今後、鍵を握るであろうイメージ戦略をどのように進めていくのか注目です!

アレルギーのリスクがある

避けて通れないのが、アレルギーの問題です。

コオロギには、エビやカニなどと同等のアレルゲンが含まれます。

そのため、甲殻類にアレルギーを持つ人は注意が必要です。

また、昆虫特有のアレルギーを発症する可能性もあります。

しかし、昆虫食は、法整備が追いついておらず、食物アレルギーを引き起こす可能性のある食品(特定原材料)には指定されていません。

このような状況なので、一定のリスクが伴うことを理解しておく必要があります。

この辺りの問題も、食品として開発が進んでいけば解決していくと思います。

遺伝子撹乱問題

昆虫は運動能力が高く、小さいので、脱走のリスクが高いです。

一度脱走されると捕獲は厳しいでしょう。

脱走した結果、外来生物として定着したり、地域の遺伝子を撹乱する可能性があります。

こうした環境への影響は取り返しがつかないので、しっかりと対策して欲しいです。

実際のところ、ここが一番のリスクなんじゃないかと思っています。

システムが未熟

食品としての歴史はありますが、大量生産し、流通させる仕組みが未熟です。

昆虫の大量生産は脱走や密飼いによる感染症などの問題も懸念されます。

管理の仕組みを構築していくことは不可欠です。

また、国外において、昆虫たちがどのように管理されているか分からないので、輸入に関する法律についても整備が必要になるでしょう。

まとめ

法が整うまで不安はあるが、実際のリスクは少ないのでは?

現状として、大量生産される食品としてのデータが少なく、法整備が緩い状態なので、一応は警戒はしておくべきです。

生食のようなことは、絶対に避けましょう。(これについては、すべての食べ物に言えることです。)

一般的に企業で売られているようなものは、会社側も食中毒を出したら終わりなので、かなり気をつけて管理しているでしょう。

世間の反応としては、昆虫食に対して賛否両論というかやや否定的な傾向が強く、みんなが警戒しているのも、まあ妥当なことだと思います。

新しいものに対して、特に口に入れる物なので、警戒心や嫌悪感を持つことは当然でしょう。

こういった状況から、不正な会社が参入するほど需要のある分野ではないことため、逆に安全なのではないかと思います。

むしろ、今後何かのタイミングで昆虫食ブームなんてものが来た時には気をつけた方が良いと思います。

結果的にゆっくりと業界が成熟していくと思うので、リスクは少ないと思います。

新しい食文化として歓迎したい

様々なリスクが懸念されるものの、昆虫食の普及は私たちの食生活に新たな選択肢をもたらすことになります。

「食料危機」や「環境負荷が低い」といった大仰なお題目は一旦置いておいて、まずは楽しんでみるべきなのではないかと思います。

例を挙げるなら、寿司が近いかもしれません。

魚を気持ち悪がって食べなかった国に寿司が普及していったように、昆虫食が日本に普及していく。

そんな国でカリフォルニアロールのような独自の寿司ができたように日本流の昆虫料理に発展していく。

昆虫食によって、私たちが出会う料理の種類が増えることを歓迎したら良いと思います。

将来的には、昆虫ならではの面白い料理が発展していくことを願っています。

おすすめの記事