獣医学生の生活について

獣医師を目指すとどんな大学生活になるのか?

そんな疑問に答えるために私自身の経験を基に獣医学生の6年間をご紹介します!

獣医学科とは?

獣医学部は、獣医師を養成するための専門の教育コースです。

日本で獣医師になるためには、以下の獣医学教育のカリキュラムを持つ大学を卒業し獣医師国家試験に合格する必要があります。

獣医学科に通い、6年間を通じて獣医学を学び獣医師としての素養を身につけます。

獣医学教育を受けられる大学

国立大学(11大学)

北海道大学、帯広畜産大学、岩手大学、東京大学、東京農工大学、岐阜大学、大阪府立大学、鳥取大学、山口大学、宮崎大学、鹿児島大学

私立大学(6大学)

酪農大学、北里大学、日本獣医生命科学大学、麻布大学、日本大学、岡山理科大学

毎年国立大学では30人程度、私立大学では100-150人程度の学生が入学します。

合計で1,000人程の学生しか入ることができないので、狭き門です。

当然ながら、獣医大学に入学する学生のほとんどが獣医師になることを希望して入ってきます。

そのため、卒業生のほぼ全員が獣医師国家試験を受けます。

就職先によっては、獣医師免許を必要ないこともありますが、そんな人でも受験することがほとんどです。

どんなことを学ぶの?

獣医学で学ぶ分野は大きく分けて3つあります。

  1. 基礎医学
  2. 臨床分野
  3. 公衆衛生・感染症分野

1.基礎獣医学分野

入学後、最初に習うのが基礎獣医学です。

獣医師になるためには、動物に関する様々な知識が必要とされます。

骨や臓器の構造や働き、メカニズムなど、個体から細胞に至るまで様々な角度から学びます。

さらに、生物が病気になるメカニズムや病原体についても学びます。

これらの学問を通じて、動物の医学を学ぶための素養を身につけます。

2.臨床分野

疾患の発生メカニズムや診断方法、治療法を体系的に学びます。

基礎医学を終えた3-4年生から学びます。

実習を通じて、手技や診断の基本を習得します。

3.公衆衛生分野

人を含めた生物の感染症を扱う分野です。

基礎医学を終えた3-4年生で学び始めます。

動物が運び、ヒトに疾患を起こす病原体や食品の衛生管理手法などを学びます。

実習では、ウイルスや細菌を検出する方法など、様々な検査法を習得します。

いずれも座学(知識を増やす勉強)と実習(手を動かして経験する)に分けられます。

犬を基本として、学習しますが、牛、馬、犬、マウス、鶏、カエル、魚など幅広い動物を扱います。

動物だけに留まらず、食品衛生や感染症といった人に関わる領域までも含んでいます。

獣医学は、動物の健康から人の健康に至るまでを包括的に学ぶことができます。

どんな生活をするの?

1年生

厳しい受験戦争を乗り越えて、やっとの思いで入学した獣医大学。

獣医を目指す学生なだけあって生き物が好きな人が多いです。

講義は一般教養科目(*1)と専門科目(*2)の基礎を学びます。

ただし、1年生の時は専門科目の講義がない大学もあります。

基本的に4年生の大学と大きな違いはないようです。

サークルや部活に所属する人もいます。

獣医学生を中心に構成されるサークルもあり、先輩に試験や将来について教えてもらうこともあります。

バイトをやっている人も多いです。忙しい学生生活の合間を縫ってバイトして飲み会して、旅行して… 勉学と遊びのどちらも頑張る学生が多い印象です。

*1 一般教養:自分の専攻と異なる分野の科目のこと。化学や物理学のような理系科目だけでなく、英語やドイツ語などの語学や法学、社会学などの文系の分野も含まれている。

*2 専門分野:自分の専門の分野。この場合は獣医学の科目のこと。

2年生

2年生になると実習(*3)が始まります。

犬の解剖やマウスなどの動物を扱うことになり、獣医大学に入ったことをしみじみと実感します。

実習がある日は帰りが遅くなったりしますが、大変な実習を共に乗り越えることで仲間が増えていきます。

2年生になると熱意のある学生は外部の実習に行くようになります。

行き先は動物病院や牧場の実習など様々です。

夏休みや春休みは、たくさん時間があるので色々なことにチャレンジしましょう!

*3 実習:実際に手を動かして、実技を学ぶ科目。

3-4年生

3-4年生になると新たな変化が訪れます。 

研究室への所属です。

獣医大学では、教授または准教授の研究グループに入り、約3年かけて一つのテーマを研究します。

研究室に入ると通常の講義や実習に研究室の当番や自身の研究進めることになり、かなり忙しくなります。

研究系の研究室では、指導教官や先輩に教わりながら、自身研究を進めます。

多くの獣医師にとって大学卒業後に純粋な研究に携わる機会は少ないため、しっかりと取り組むと良い勉強になります。

臨床系の研究室では大学病院で指導教官の指導の下で臨床の現場に参加します。

最先端の臨床技術を体験できるため、臨床分野を目指す学生にとって良い経験となります。

研究室への所属は慣れない研究や臨床現場への参加に加えて、新たな仲間たちとの共同生活が始まります。

大変ではありますが、貴重な経験をすることができます。

講義は、動物の診療に関わる臨床科目や感染症や公衆衛生分野に関わる応用科目を学ぶようになります。

実習も臨床系や応用系の科目が中心となり、実践的なものになります。

講義、研究室、実習と課題が増えてきて、学生生活で一番忙しい時期かもしれません。

なかなか自由な時間を取りづらくなります。

ここまでに落とした単位が多い人は、留年の危機に陥ります。

5年生

5年生になると全員が大学病院の臨床の現場に入り、各科の仕事を見ることになります。 

研究室の生活にも慣れてきて、後輩に教える立場となります。

研究室でともに過ごした先輩が卒業・就職してしまうため、自分の将来とも向き合うことが増えてきます。

就職先について真剣に考え始め、実習に行くようになります。

講義や実習が減るため、拘束時間が減ります。

やることは増えていても、案外時間が取れる時期です。

学外実習や学生としてやっておきたいことがあるなら、この時期にやっておきましょう。

6年生

6年生の生活は、壮絶に忙しいの一言に尽きます。

獣医学生生活の最後の壁である就職活動・卒業論文・国家試験があるからです。

自分の研究成果をまとめて、学会発表や論文投稿をする人もいます。

夏休みくらいまでに自分の研究に目処をつけ、そこから発表のためにデータ整理やまとめの作業に入って行きます。

普段からマメにデータ整理をしていないとこの時期に絶望を経験します。

一般に獣医学会は9月、卒論発表は9月~11月に開催されます。そのため、夏休みの多くをスライド作成や発表練習に使います。

また、発表とは別に卒業論文を作成します。この二つを同時に並行して行うので本当に辛いのです。

獣医学生生活最後の山となるのが獣医師国家試験です。

これを通過できないとせっかく6年間勉強して来たのに獣医師として仕事をすることができません。

なので、みんな死に物狂いで勉強します。

受験時代を思い出すことでしょう。 

試験が終わると学生最後の春休みです。

試験結果発表までの期間は友人たちと卒業旅行に行きます。

試験に合格すると晴れて獣医師としての資格を得られると思いきや、様々な手続きが存在します。

一通りの手続きを終えて、晴れて4月から獣医師として働くことができるようになります。

まとめ

このように獣医師になるための道は、大変ですが常に変化があり、動物好きな仲間たちと6年間を過ごせる素晴らしい環境です。

獣医師を目指す方の参考になれば幸いです!

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